第11章 少しずつの勇気
◇◇◇
授業の復習を終えてからも、寝る用意は捗らなかった。
……整理しろ。
シシィの前で、彼氏面という言葉を出してしまった……あれは、大事故だった。
しかし。
彼氏面、してても、いいよ????
あの言葉が空耳の可能性は、やはり高い。そう念じて何度も首を振る。
いや、それでも……現状の「ほとんど彼氏面」の距離感を許された事、それ自体は事実……なの、か?
待て。その許しは、こちらに下心がないことを前提としたものなのでは。
しかし、中途半端に希望を持った脳みそは、なかなか言うことを聞かない。
だってあれは……空耳でないならば、もう友達として普通の会話じゃなかった、と思う。
淡かったはずの希望が、また光度を上げる。
本当に?
すべてが勘違いではないか。
しかしあのゼラの一件を終えて、ノルバート自身、ついに認めざるを得ない。
僕のこの気持ちは……もう、誰かに譲って諦めるには、育ちすぎている。
◇◇◇
「シシィ、今日、あの」
妙にぎこちない挨拶を終えての休み時間だった。
さっきからノルバートとは目こそ合わせられなかったものの、彼から声をかけてきてくれたのでシシィはひとまずほっとしていた。
「う、ん」
「ええっと、今日、その、とても……すごく……」
二人してわたわたと手を振る。ノルバートの様子は、今日はまだ早いのに見るからに閉店間際だが、たぶん手の動きからしてなんの話なのかは察せた。
だから、勇気を出して少しだけ、前向きなほうへ踏み切った。
「ねえっ、実は、わたし」
吃らないよう、必死で言葉の速度を落としながら話題を振る。
「最近ね、髪とか……色々やるの、はまってて」
シシィはもう一段頑張ってみた。
「ちょっとね、それでね、今後の参考に……ノルバートの意見が聞きたい、なって」