第1章 パーティと隅っこ 前編
徐々に人が集まりはじめた庭は思ったより明るい。
夜風がほてった頬を少し覚ましてくれるのが気持ちよかった。
男の子が口を開いた。
「……いきなり、連れ回すようなことをして、ごめん。じつは……さっきの場の勢いが少し気になってしまって。勘違いかもしれないけれど」
「えっ……?」
「あ、でも、もしかして、あの先輩達、もとから知り合いとか……だった?」
シシィは少し意味を読むのにかかってから、やっと首を振った。
「ちがう……」
急に、目頭が熱くなった。溢れてこぼれてしまう前に、咄嗟にシシィは顔を背けた。
彼はその様子に、何も言わなかった。
◇◇◇
こういう場は何度か出ているとは言え、どうしても得意ではない。
パーティ会場の隅の窓辺で、ノルバートは早くも少し参っていた。
そろそろ抜けるには……早い、か。そんな気持ちがたびたびよぎる。社交体力はとっくに品切れだ。なんとか程よいところで帰って、図書室で借りた本の続きを読もう。
そんなことを考えつつ全体を眺めていたら、おとなしそうな女の子が上級生らしき男性達からしきりに話しかけられている様子が目についた。
同級生だろうか。髪と肌は白く、耳が少し尖っている。
……あれは、かなり……飲まされてる。
尖耳族はその珍しい見た目から、裏ではあまり良くない方向で消費されている事を、彼は知識として知っていた。見ている間にも先輩達は今にも肩を組みそうな勢いでどんどん酒を勧め、注ぐ。
その子のグラスを持つ手は、少し震えていた。
……余計な事だろうか、でも。
彼はようやく一歩、壁際から足を踏み出した。