第1章 パーティと隅っこ 前編
シシィたちの輪に、黒髪の男の子が声をかけてきた。衣装は紺、耳には青い石を揺らしている。新入生? 何学科? と先輩たちが口々に尋ねる。
男の人って、こんな、耳飾り……似合うんだ。
そんなことを思っていたせいで、反応が少し遅れた。
「あっ こんばんは! は、はじめまして!」
シシィがなんとか挨拶すると、彼も「はじめまして」と返してくれた。
「同級生、ですか……? ええっと、そうだ、乾杯! 乾杯しましょ!」
そう言ってしまってから、男の子の手にグラスがないことにハッと気づく。
たまには、自分からもお酒を注がないと……!
勢いでその子に空のグラスだけを渡してから、やっとおかしなことをしていると認識し、シシィは慌てる。
なに、何やってるの、わたし……
しかし、彼は特に呆れてはいないようだった。
「あ……ごめん、今日はお酒はあまり飲まないんだ、でも、ありがとう。アルコール無しのものがあっちにまとまってるみたいだから、見に行ってもいい?」
シシィは考える余裕もなく首を縦に振った。
ソフトドリンクの席にも先輩達は何人かついてきて、引き続き色々話しかけられたが、その男の子はシシィの隣から離れないで、ひかえめな声であのお茶が珍しいだの、この水は果汁が入っていて美味しいだのと教えてくれる。「茶会じゃん」「ダンスパーティってわかる?」と呆れ口調の先輩達にも、「この茶葉にはよく眠れる効果があって……」と彼はペースを崩さない。
そうこうするうちに二次会の話は有耶無耶になった。
外で花火が上がる時間だった。火属性の学生がイベントごとに発表の場としてどうとかこうとかで、毎回すごいらしい。
「えー、もっと話そうよ」
引き止めてくる先輩達に、男の子は丁寧に挨拶した。
「僕らはこういった席に慣れないので、今日はこのあたりに。ありがとうございました」