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閉店屋の恋は進まない

第1章 パーティと隅っこ 前編


 この大きな街の人々は、お祭り事に目がない。隙さえあれば風船を飛ばすし、流れ星を増やす。近くの雲は何かあるたびにご機嫌な色に染められて、今日も呆れ返ったわたあめのように街人たちに付き合っている。
 だから、そんな街の中央でぴかぴかとした窓を輝かせている魔法大学が、何かにつけしょっちゅう騒いでは近隣住民に不満を言われ、しかし結局は一緒に踊り始めるのもいつものことだった。

「はあ〜」

 盛り上がる校庭の隅。今日も早々と物陰に引っ込んで、シシィは小さく息を吐いた。そして、慣れた人影を探す。

 もう、いるかな……。

 あ。

「先着一名様? つかれちゃった?」
 声をかけられた彼は、挨拶がわりに少し肩を下げた。
「もう、よろよろ、かな……」
「よろよろ!」
「でも、今からまたちょっと出ないと」
「そうなんだ、がんばれ〜」
 シシィは弱々しく立ち上がる彼を見送りながら、熱をおびかけた頬を手のひらで冷ました。

 仲良く……なれたのは、嬉しいんだけど。


◇◇◇


 入学してすぐの、新年度のダンスパーティ。
 深い青の天井に金の蝋燭が煌めいて、色とりどりに着飾った学生達を照らす。その広間の真ん中近くで、シシィは早くも、くらくらと目を回しかけていた。

「魔法絵画専攻なの? いいね〜!」
「このお酒、よく覗いてみて。中に星空入っててかわいいでしょ? こういうの好き?」

 開場からすぐに話しかけてくれた先輩達は、シシィが緊張で噛んでもすぐに盛り上げ、笑いに変えて、沈黙を一切作らない。優しくて、喋るのが上手な人達。シシィも楽しいつもりだった。


 でも。

 ……あれ?

 肩にまた、手が触れた。

 髪も、時々。何回か。

 お酒の席って、こういうものなのかな……

 疑う発想はまだなかった。ちゃんと返事して、ちゃんと笑わないと。
 自分たちの二次会に来ないかと誘われ、ぜひ、と言いかけた時だった。

「こんばんは」
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