第4章 言葉になっちゃった
「変なひとだったね、大丈夫?」
振り返った彼はもう、いつもの柔らかい声に戻っていた。
「……やっぱり、やっぱり変だったよね?! すぐ判断できなくて」
思わず、ちょっと上擦った声が出てしまったけど、彼は首を横に振る。
「それは仕方ないと思う、でも、ちゃんと断れてた。あれは向こうの勢いがおかしい。……さっきの様子は校庭の監視魔法に記録されてるはずだから、学校を通して通報しよう」
◇◇◇
「えっと、最初は道を聞かれて……だんだん様子が変で、その」
「あの時、彼女は立ち去ろうとしていましたが、部外者の男が肩周りを掴んで引き留めている状態でした」
「なるほど、それは怖いねえ……」
二人の話を聞きながら、相談員は眉を寄せる。
半ばまで話したところで、警察から相談室に連絡が入った。
「今捕まったと、現場から」
「おー、早いですね」
職員の返事に、警官は、いやあ、と頬を掻いた。
「それがですね……」
追うのは容易かった、と警官は報告した。
男の足跡が、靴の形に凍りついて光り、道標になっていた。
さらには、男はどこに逃げ込むわけでもなく屋外にいた。彼の周り一人分の空間だけに激しい雪が降り注いでいたからだ。
「えっ、雪? 氷?」
シシィはあの時、ノルバートが男の背に何か唱えていたのを思い出した。
あれって、もしかして。
「ノルバートがやったの……?」
シシィの質問に、彼は頷いた。
「あ……うん、人の多い場で暴れられるのを避けたくて……やっぱり、その場で捕まえようとすると強力な呪文が要るし、氷魔法を人体に直は、少しやりすぎるリスクもあったから」
その声は、いつものように控えめだった。
後処理が一通り終わる頃には、日も少しずつ落ちてきていた。
帰り道、普段はふざけ合うような会話の方が多いが、この日は少し違った。
「……ノルバート、今日は遅くまでありがと ……やっぱりあれ、一人じゃ無理だったし……すごく助かった、ほんとに」
別れ際、やっと緊張が溶けてきたシシィが、最後だけ少し笑いながらお礼を言う。
「うん、いいよ、無事ですんでよかった」
ノルバートも穏やかにそう返してくれた。