第4章 言葉になっちゃった
ノルバートは氷とか雪を扱う魔法が上手い。案外、とか言ったら良くないけど、イベントの警備とか、馬車の護衛とか、そういう案件をよくアルバイトで請けていて生活の足しにしているらしい。
家業がそっち系だったから……というが、あまり詳しく本人からは語らないのでシシィも多くは知らなかった。
ふだん閉店してる時の顔はもうよく知ってるけど、そういう仕事の時ってどんな感じなんだろう。でも、見ちゃったら余計また、「ずるい〜!」てなりそう。
そんなことを思ったりしてたある日、事件は起きた。
「すみません、少しお尋ねしたいのですが」
「あっ! はい!」
校庭で、学外から入ってきたらしき中年の男性に、シシィは道を聞かれた。
最初は……普通だったと思う。でも。
「ありがとうね、ちなみに君は、どこ専攻ですか?」
「えっ? わたし、ですか……?」
え、専攻?
「……あ その わたし、そろそろ……」
これ、だめなやつ、かも。
「画材持ってる? じゃあ魔法絵画かな。若き芸術家かあ、いいねえ……展示とかやったりする?」
シシィが拒絶の言葉を探す間にも、男はどんどん近づいてきて。
とうとう、肩に手が触れた。
「っの……っ もう……!」
掴む力が、思いの外強い。
どうしよう。
足がすくむ。
うまく声が、出ない。
「あのー……ストップ、そこまでです」
肩の手が、引き剥がされる感触。
「何してるんですか? ご家族とか…じゃないですよね?」
「あ……」
見慣れた背中が、男の手と肩を押し返していた。
……ノルバート。
「なんですか! ちょっと道を聞いてお話ししてただけで」
「……距離のつめかたがさっきから変ですよ。
度が過ぎれば学校に報告しないといけないので」
いつもより低い、シシィがはじめて聞く声色だった。
「あんたこそ急に入ってきてどう言うつもりですか? この子の彼氏かなんかか?」
男が腹立たしげに言い返す。
「答える筋合いはありません。道はもういいんですか? 僕がご案内しましょうか?」
「結構だ!」
男はノルバートの腕を乱暴に振り払い、走り出した。
その後ろ姿に、ノルバートが何かつぶやくのをシシィは微かに聞いた。