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閉店屋の恋は進まない

第3章 友達


 教室の時計が正午を打った。

 日当たりのいい隅っこの角には、今日もいつもの面々がたむろしていた。
 よく集っているのは数人。それぞれの授業の合間に昼食を持ち寄り、ノートに落書きをし、読ませたい本を押し付け合う常連たちは、種族は獣人だったり人魚など、各々に生態が違う。性別の概念の薄い種もいる。
 この中で──狭い意味での「人間」に区分されるのは純人間種であるノルバートと、尖耳の血筋を濃く引くので少し外れるものの、シシィの二人ぐらいだ。
 そのためグループ内では、特にシシィへの目線は向いていない。そう、人間種の雄……ノルバートだけが、裏でこの有様ということになる。


「そこにいるのシシィちゃん、だよね?」
「え……はい」
「やっぱり! うわ〜〜かわいい〜〜! 俺は隣のクラスの……」

 シシィは尖耳族だとどうしても絡まれやすく、このグループにもよそから変な奴が入ってくることは稀になくもない。
 そんな時は皆で口々に防衛戦の始まりだ。

「あっそこの人、悪いけどこのグループはシリーズ読んだ人じゃないと色々難しいんだよ」
「合わせて20巻くらいになります」
「最近出た新しい訳は情緒がない。旧版を読め」
「それは諸説あるだろ」
「前日譚から始めるといいよ! 見える景色変わるよ!」
「まあ、そういうわけで ごめんね〜〜」

 こうやって、めちゃくちゃに本の話を振り続けてシシィのほうに行かせない。それがこの地味な面子のいつものやり口だった。
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