第2章 虎杖悠仁
【ペリドット】
8月某日。今日はロロの誕生日。朝から虎杖の様子がおかしかった。いつもなら普通に話しかけてくるのに、今日は妙に目を合わせない。
「悠仁?」
「え!?な、何!?」
「いや、呼んだだけだけど」
「そっか!」
明らかに怪しい。しかも。
「今日の放課後、予定ある?」
「ないけど」
「じゃあ絶対、寄り道しないで帰って!」
言った直後、虎杖はしまったという顔をした。
「…今の忘れて」
「無理でしょ」
実は虎杖は、ロロの誕生日サプライズを計画していた。ペリドットのプレゼント。手作りのケーキ。部屋の飾り付け。完璧な計画のはずだった。はずだったのだ。
「よし! あとはケーキを運ぶだけ!」
虎杖が箱を持った瞬間。箱の中で少し傾くケーキ。
「待って待って待って!」
慌てて直そうとして、今度は飾り付け用の風船に引っかかる。
「うわっ!」
風船が飛ぶ。その勢いで壁の飾りが落ちる。部屋は数秒で大惨事になった。
「…サプライズって難しい」
虎杖は真顔で呟いた。そして放課後。ロロが部屋に入ると、床には風船。机には少し崩れたケーキ。そして真ん中で正座している虎杖。
「…誕生日、おめでとう」
「何があったの?」
「サプライズしようとしたけど、失敗した」
素直すぎて笑ってしまう。すると虎杖は少し恥ずかしそうに笑った。
「本当はもっとカッコよく渡したかったんだけど」
そう言って、小さな箱を差し出す。中には綺麗なペリドット。
「これだけは無事だった」
「ありがとう」
ロロが笑うと、虎杖は安心したように息を吐いた。
「よかった。ロロが笑ってくれた」
虎杖は照れながら続ける。
「俺、こういうの苦手だけどさ。ロロの誕生日は、ちゃんと特別にしたかった」
少し崩れたケーキ。曲がった飾り。失敗したサプライズ。でも。
「…一番嬉しい誕生日かも」
そう言うと、虎杖の顔がぱっと明るくなる。
「ほんと!?」
「ほんと」
「よかったー!」
大きな声で喜ぶ虎杖。その勢いで、また風船が一つ飛んだ。笑い声が部屋に響く。完璧じゃないけれど、虎杖らしい。ペリドットよりも眩しい思い出になった。