第2章 虎杖悠仁
【プロポーズ】
任務を終えたロロは、隣を歩く虎杖を見上げた。大人になった虎杖は背も高くなり、肩幅も広くなった。ごつごつした大きな手は、何度も誰かを守ってきた証みたいだった。
「悠仁」
「ん?」
立ち止まった虎杖が振り返る。
胸が苦しいほど鳴る。それでも、今日だけは伝えたかった。
「…結婚してください」
静かな一言。虎杖はぱちりと目を瞬かせた。
「…え」
時間が止まる。ロロが返事を待っていると、虎杖の耳がみるみる赤く染まった。
「え、えっと…!」
口を開いては閉じ、何か言おうとして言葉にならない。そして次の瞬間。
「ご、ごめん!」
そう叫ぶと、くるりと背を向けて全力で走り出した。
「えっ!?悠仁!?」
呪術師らしい俊足で角を曲がり、その姿はあっという間に見えなくなる。取り残されたロロは、小さく笑うしかなかった。
「…振られた、のかな」
胸が少しだけ痛む。そのとき。
「はぁ…はぁ…!」
遠くから慌てた足音が近づいてきた。
「待って!違うから!」
息を切らした虎杖が、ロロの前で勢いよく立ち止まる。額には汗がにじみ、肩で大きく息をしている。
「ごめん…俺、最低だ」
「嫌だった?」
震える声で尋ねると、虎杖は勢いよく首を横に振った。
「違う!嬉しすぎたんだ!」
照れくさそうに笑って頭をかく。
「ずっと俺が言うつもりだったからさ。指輪もタイミングも、全部考えてた。なのに先を越されて、頭ん中真っ白になって…」
困ったように笑う顔は、大人になっても変わらない。
「逃げるなんて格好悪いよな」
そう言って差し出された手は、少し震えていた。ロロがその手を握ると、虎杖はほっと息をつく。
「もう逃げない」
まっすぐ目を見つめ、優しく微笑む。
「これから先、どんな毎日でも、ロロの隣にいる」
虎杖は照れ笑いを浮かべながら、ロロの手をぎゅっと握り返した。
「だから改めて、俺と結婚してください」
今度はロロが笑って頷く。
「はい」
その返事を聞いた虎杖は、安心したように笑い、そっとロロを抱き寄せた。
「さっきは逃げてごめん。一生大事にする」
その約束は、どんな指輪よりも温かく、ロロの心に残り続けた。