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短編

第2章 虎杖悠仁


【手】


「ねえ、悠仁」

寮のソファでくつろいでいる虎杖の隣に座り、ロロはそっと虎杖の右手を取った。

「ん? どうした?」

大きな手。指は長く、節が少し目立つ。何度も戦ってきたせいか、手のひらは少し硬くて、触れるとざらりとした感触が指先に伝わる。ロロはその手を両手で包み、親指でゆっくりなぞった。

「…好き」

「え?」

「悠仁の手」

虎杖は照れたように笑う。

「こんなゴツゴツした手が?」

「うん」

ロロは迷いなく頷いた。

「綺麗な手より、こっちが好き」

虎杖は自分の手を見つめる。

「傷もあるし、硬いし。あんまり自慢できる手じゃないけど」

「違うよ」

ロロは虎杖の手をそっと持ち上げ、自分の頬へ当てた。少しだけ硬い感触。それなのに、不思議なくらい安心する温もり。

「この手、いっぱい頑張ってきた手だから。誰かを助けて、何度も傷ついて。それでもまた誰かを守ろうって前に出る手」

ロロの言葉を聞きながら、虎杖は少しだけ照れくさそうに目を細めた。

「そんなふうに考えたことなかった」

「私は毎回思ってる」

ロロは指先を虎杖の手のひらに重ねる。

「この手が私を守ってくれたこと、ちゃんと覚えてる」

その一言で、虎杖はふっと優しく笑った。

「ありがと」

今度は虎杖の方からロロの手を包み込む。大きくて、少しゴツゴツした手。だけど握る力は驚くほど優しかった。

「じゃあさ、これからもこの手でロロを守る」

真っすぐな瞳に見つめられ、胸が熱くなる。ロロは照れ隠しに笑いながら、その手をぎゅっと握り返した。

「守ってもらうだけじゃないよ。疲れた日は、私がこの手をあっためる」

虎杖は一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑う。

「それ、いいな」

重ねた手は少し不格好で、大きさも形も違う。それでもロロにとって、この少しゴツゴツした温かな手は、世界中のどんなものよりも愛おしかった。
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