第2章 虎杖悠仁
【特等席】
夜の寮。窓を叩く雨音に混じって、空が白く光る。ゴロゴロ。少し遅れて響いた雷に、思わずロロの肩が震えた。
「…また鳴った」
小さく呟くと、隣でくつろいでいた虎杖が心配そうにこちらを見る。
「やっぱり怖い?」
「…少しだけ」
そう答えた直後、今度は部屋が震えるほど大きな雷鳴が響いた。ドォンッ!
「っ!」
反射的に目を閉じる。すると、ふわりと手を握られた。
「こっちおいで」
気づけば、虎杖はソファに深く腰掛け、自分の膝を軽く叩いていた。
「でも…」
「遠慮しなくていいから」
その笑顔に背中を押され、おそるおそる膝の上へ座る。
「…失礼します」
「うん」
虎杖はロロが座りやすいように腕を回し、落ちないようにしっかり支えた。また雷が鳴る。思わず虎杖の胸元をぎゅっと掴むと、虎杖は何も言わず、背中をゆっくりと撫で始めた。
「ゆっくり息して」
一定のリズムで背中をさする大きな手が心地よくて、少しずつ力が抜けていく。
「怖いの、我慢しなくていいから」
「子どもみたいで恥ずかしい」
そう呟くと、虎杖は優しく笑った。
「俺だって怖いものあるし」
「悠仁にも?」
「あるよ。だから、頼ってもらえるのは嬉しい」
「…ありがとう」
「どういたしまして。雷が止むまで、今日はここがロロの席」
「特等席?」
「そう。誰にも貸さない」
照れくさくなって笑うと、虎杖もつられて笑った。窓の外ではまだ雨が降り続いている。けれど、膝の上は驚くほど温かい。虎杖はロロの前髪をそっと整え、優しく頭を撫でた。
「眠くなった?」
「…少し」
「じゃあ、寝ちゃってもいいよ」
「でも重いよ?」
「気にしない。起きるまで動かない自信ある」
思わず笑うと、虎杖は満足そうに微笑む。もう一度雷が鳴る。それでも今度は怖くなかった。ロロは安心して虎杖の肩に頬を預ける。虎杖はそっと腕に力を込め、落ち着かせるように背中を撫で続けた。
「大丈夫」
優しい声が耳元で響く。
「雷が止んでも、もう少しだけこのままでいていい?」
その問いに、ロロが小さくうなずくと、虎杖は照れたように笑った。外は嵐でも、その膝の上だけは、どこよりも穏やかで温かな場所だった。