第2章 虎杖悠仁
【モーニングコール】※中学生の虎杖
朝6時。枕元のスマホが小さく震える。画面には、悠仁と毎日変わらない名前が。眠い目をこすりながら通話ボタンを押すと、すぐに明るい声が響いた。
『おはよ!』
「…おはよう」
まだ少し掠れた声で返すと、電話の向こうで虎杖が笑う。
『まだ眠そう!』
「悠仁が元気すぎるの」
『だって朝だし!』
その一言に、思わず笑ってしまう。
『ほら、笑った』
「笑わせたのは悠仁でしょ」
『成功!』
嬉しそうな声に、自然と眠気も薄れていく。
『ちゃんと起きた?』
「うん、ベッドからはまだ出てない」
『ダメだって!二度寝したら遅刻するぞー?』
「あと5分だけ…」
『5分って言う人は30分寝る!』
「う…」
図星を突かれ、返す言葉がない。
『よし、じゃあ歯磨き終わるまで電話切らない』
「えっ?」
『応援する!』
「応援って何」
笑いながらベッドを降りると、虎杖が『よしよし!』と拍手する声が聞こえた。
『立った!』
「実況しないで」
『洗面所着いた!』
「だから実況しないでって」
電話越しに2人で笑い合う。歯を磨き終えて部屋へ戻ると、虎杖が満足そうに言った。
『えらい!』
「子どもじゃないんだけど」
『でも頑張ったじゃん』
褒められると少し照れくさい。
『今日は放課後、一緒に帰れる?』
「帰れるよ」
『やった!』
その声だけで、今日一日が楽しみになる。
『じゃあ、校門で待ってる』
「うん」
少しだけ名残惜しい沈黙が流れる。
「…電話、切る?」
ロロが尋ねると、虎杖は小さく笑った。
『本当はもう少し話したい』
その素直な言葉に胸が温かくなる。
「私も」
短い返事だけで十分伝わったらしい。
『じゃあ約束!』
「うん?」
『学校で一番最初に会ったら、おはようってちゃんと言うこと』
「電話でしたのに?」
『直接言う、おはようは別!』
楽しそうに笑う虎杖につられて、ロロも笑顔になる。
「分かった」
『じゃあ、行ってらっしゃい!』
「悠仁も、行ってらっしゃい」
通話が切れたあとも、さっきまで聞こえていた明るい声が耳に残っていた。朝は少し苦手だったはずなのに、今では毎朝6時になるのが、少しだけ楽しみになっていた。