第2章 虎杖悠仁
【ジェラート】
夏の日差しが照りつける商店街。
「暑い!」
虎杖は額の汗をぬぐいながら、ロロの隣を歩いていた。
「もう溶けそう…」
「じゃあ、あれ食べよう!」
虎杖が指差した先には、小さなジェラート屋さん。ショーケースには色とりどりのジェラートが並び、どれも美味しそうだった。
「私はピスタチオにしようかな」
「俺は苺ミルク!」
受け取ったジェラートを手に、近くのベンチへ腰掛ける。
「いただきます!」
一口食べた虎杖は、ぱっと笑顔になった。
「うまっ!冷た~い!」
その笑顔につられて、ロロも頬が緩む。
「一口食べる?」
そう聞くと、虎杖は目を輝かせた。
「いいの?」
「もちろん」
ロロがスプーンを差し出すと、虎杖は素直にぱくり。
「おお!ピスタチオって初めて食べたけど、おしゃれな味!」
「おしゃれな味って何」
笑いながら返すと、虎杖も照れくさそうに笑う。
「じゃあ、お返し」
虎杖は自分の苺ミルクをすくって差し出した。
「はい、あーん」
「外でやるの?」
「恋人なんだから、たまにはいいじゃん」
周りを気にしてためらうロロを見て、虎杖は少しだけ意地悪そうに笑う。
「早くしないと溶けるぞ?」
観念して口を開けると、甘酸っぱい苺と優しいミルクの味が広がった。
「美味しい」
「だろ?」
満足そうに笑う虎杖の鼻先に、小さくジェラートがついている。
「悠仁、鼻」
「え?どこ?」
慌てる虎杖が可笑しくて、ロロは指先でそっと拭ってあげた。
「ありがとう」
そう言って笑う虎杖は、今度はロロの口元をじっと見つめる。
「今度はロロについてる」
「えっ?」
「取っていい?」
ロロが頷くと、虎杖は指先で口元についたジェラートを優しく拭った。
「はい、きれい」
照れ隠しに歩き出そうとすると、虎杖はロロの手をぎゅっと握る。
「今日は暑いけどさ、こうして一緒にジェラート食べて笑ってるだけで、夏っていいなって思える」
繋いだ手は少し汗ばんでいたけれど、不思議と離したくはなかった。溶けていくジェラートよりもゆっくりと、2人の幸せな時間だけが、夏の午後に甘く溶けていった。