第1章 五条悟
【術式】
「私の術式は『天邪鬼』です」
ロロがそう告げると、五条は興味深そうに首を傾げた。
「天邪鬼?」
「はい。術式で指定した対象の性質や行動を、一時的に『逆転』させます」
「例えば?」
ロロは近くに置いてあった小石へ術式をかける。
「『重い』を『軽い』へ」
ふわり、と石が風船のように浮かび上がった。
「へぇ」
五条の表情が真剣になる。
「じゃあ『速い』を『遅く』にもできる?」
「できます。でも強い相手程呪力を消費します」
「なるほど。面白い術式だね」
訓練中、五条は木刀を振り下ろす。
「避けて」
ロロは術式を発動した。『速い』を『遅い』に。木刀の速度が一瞬だけ鈍る。その隙にロロは回避した。
「正解」
五条は感心したように頷く。
「相手そのものじゃなく、『性質』を反転させる術式か」
「はい。でも限界があります」
「万能じゃないんだね」
「はい。術式が複雑な相手には通りにくいです」
五条は少し考える。
「でも、発想次第でかなり化けるよ」
「え?」
「例えば敵の『防御が硬い』を『脆い』へ。『攻撃が正確』を『不正確』へ。『傷が治る』を『治らない』へ」
次々と応用例を挙げる五条に、ロロは驚きを隠せない。
「そんな使い方、考えたこともありませんでした」
「術式は才能だけじゃない。使い方で、いくらでも強くなる」
その言葉を聞いたロロは、自分の術式に初めて大きな可能性を感じた。
「これは、育てがいがありそうだ」
その日から『天邪鬼』は、ただ逆転させる術式ではなく、戦況そのものを覆す力へと成長していくのだった。