第1章 五条悟
【投げキッス】
昼休みの高専の中庭。ベンチで飲み物を飲んでいるロロ。そこへ、五条がヒラヒラと手を振りながら歩いてくる。
「お、いたいた」
いつもの軽い調子。ロロは呆れたように笑う。
「また授業サボったんですか?」
「人聞き悪いなぁ。ちょっと休憩」
そう言って笑った五条は、少し離れた場所で立ち止まる。
「ねぇ、見てて」
「何をですか?」
五条はニヤリと笑うと、ロロに向かって片手を口元へ。
「んーっ」
ふわり、と投げキッスした。
「…!」
突然過ぎて固まるロロ。
「え、えっと」
慌てたその瞬間、何故か反射的に両手を伸ばしてしまう。ぱしっ。まるで本当に飛んできたみたいに、その投げキッスを空中で受け止める仕草になった。数秒の沈黙。
「…ぷっ」
先に吹き出したのは五条だった。
「あははは!何それ!」
「ち、違います!反射で!」
顔を真っ赤にするロロを見て、五条は腹を抱えて笑う。
「普通避けるか照れるでしょ。なんで射止めるの!」
「だって急だったから!」
「最高なんだけど」
笑い過ぎて涙まで浮かべた五条は、ようやく落ち着くとロロの前まで歩いてきた。
「じゃあさ」
ロロの手をそっと包み込む。
「せっかく捕まえてくれたなら、返してもらおうかな」
「え?」
「投げキッス」
至近距離で悪戯っぽく笑う。ロロは照れながら首を振る。
「返しません」
「えー」
「私が捕まえたので」
その一言に五条は一瞬目を丸くしてから、嬉しそうに笑う。
「それ、かなり可愛い独占欲じゃん」
照れて俯くロロを、五条は優しくポンポンと撫でる。
「じゃあ、そのキスは君のモノってことで」
「…はい」
穏やかな昼下がり。くだらないやり取りに笑う2人だった。