第2章 虎杖悠仁
【生まれ変わり】
「ロロ!」
虎杖の声が響く。
「ここにいたのか」
「…悠仁」
その横顔は、どこか遠くを見ていた。
「私ね、思い出したの。全部」
魔王だった頃の記憶を。人間に裏切られ、仲間を失い、憎しみに飲まれて世界を敵に回したことを。
「だから怖いの。また誰かを失ったら、私は…」
言い終わる前に、虎杖はロロの両肩を掴んだ。
「だったら、俺が止める」
「…え?」
「ロロが魔王になりそうなら、俺がぶん殴ってでも止める」
あまりにも虎杖らしい答えに、ロロは思わず笑ってしまう。
「ロマンの欠片もない」
「あるって。俺なりの」
虎杖は照れくさそうに頭をかいた。
「ロロは1人じゃない。前世のロロを知らなくても、今のロロを知ってる。優しくて、人のために泣ける奴だ」
その時、空間が裂けた。黒いローブをまとった魔族たちが現れる。
「魔王様、時が来ました。魔界の門が開きます」
ロロの体から黒い魔力が溢れ始める。魔族達は手を差し伸べる。
「お戻りください」
ロロはその手を見つめ、ゆっくりと首を横に振った。
「帰らない。私はもう、魔王じゃない」
そして隣に立つ虎杖の手を握る。
「私は、虎杖悠仁が好きな、1人の女の子だから」
その言葉と同時に、黒い魔力は淡い光へと変わった。魔族達は驚きながらも、やがて穏やかに微笑む。
「…魔王様は、本当に救われたのですね」
誰よりも恐れられた王は、たった一人の少年の温もりに救われた。虎杖は繋いだ手をぎゅっと握る。
「帰ろう」
「うん」
魔界ではなく、戦場でもなく。2人が笑って「ただいま」と言える場所へ。それが今のロロにとって、何より大切な居場所だった。