第2章 虎杖悠仁
【バターナイフ】
「ねぇ、その武器って壊れないの?」
任務の帰り道。虎杖が何気なく尋ねた。ロロはポケットから銀色のバターナイフを取り出し、夕日にかざす。
「壊れるよ」
「あ、そうなんだ」
「だから、何本も持ってる」
制服の内ポケット、腰のホルダー、袖の隠しポケット。1本、2本、3本。気づけば10本近いバターナイフが並んでいた。
「えぇぇぇ!?」
虎杖が思わず後ずさる。
「そんなに!?」
「任務中に折れたら困るから」
ロロは1本を指で回してみせる。
「これは投げる用」
もう一本を取り出す。
「これは近接戦用」
さらに細身の1本。
「これは呪力を流しやすい」
「全部違うの!?」
「うん」
虎杖はしばらく黙ったあと、吹き出した。
「ロロ、バターナイフ職人になれるよ」
「褒めてる?」
「もちろん!」
その笑い声を遮るように、突然ビルの屋上から呪霊が飛び降りてきた。
「危ない!」
虎杖が前へ出る。だが、ロロは静かに1本のバターナイフを構えた。指先から放たれたバターナイフは、流れ星のような軌跡を描く。迷いのない一直線。呪霊の額を貫いた。虎杖はぽかんと口を開けた。
「投げナイフまでできるの…?」
「昔、練習した」
「すごすぎるだろ…」
ロロは落ちてきたバターナイフを空中で受け止める。傷一つない刃を布で拭き、何事もなかったようにポケットへ戻した。
「1本も無駄にしないんだな」
その仕草を見て、虎杖は優しく笑う。
「ロロってさ、戦い方まで優しいよな」
「…優しい?」
「うん。必要以上に壊さないし、無駄に傷つけない。だから、そのバターナイフがロロに似合うんだと思う」
その言葉に、ロロは思わず足を止めた。武器のことで褒められたことは何度もある。でも、武器が自分に似合うと言われたのは、初めてだった。
「…悠仁」
「ん?」
「今度、1本あげる」
「えっ、本当!?」
「もちろん戦闘用じゃなくて、普通にパンを塗る用だけど」
「そっちかー!」
虎杖の大げさなリアクションに、ロロは声を上げて笑った。