第2章 虎杖悠仁
【自分を傷つける呪い】
虎杖には、最近どうしても消えない言葉があった。
『ごめん』
誰かを傷つけた時。守れなかった時。自分の力が足りなかった時。気づけば、いつもその言葉が口から出ていた。ロロは、そんな虎杖の癖に気づいていた。
ある任務の帰り道。虎杖は隣を歩くロロを見て、ぽつりと言う。
「…ごめん」
「また?」
ロロが足を止める。虎杖は困ったように笑った。
「だって、俺がもっと早ければ。もっと強ければ」
その先を言おうとした瞬間。ロロが虎杖の頬を軽くつついた。
「それ、禁止」
「え?」
「ごめんって言う前に、一回私の顔見て」
虎杖は驚いたようにロロを見る。ロロは優しく笑った。
「私は怒ってない。悠仁が頑張ってたとこ、ちゃんと知ってる」
その言葉に、虎杖は黙る。ずっと自分を責め続けていた。でもロロは、責めるためじゃなく隣にいるために一緒に歩いてくれている。
「…でも」
「まだ言う?」
虎杖は口を閉じる。ロロは少し笑った。
「悠仁のごめんは優しいけど。たまに、自分を傷つける呪いみたいになってる」
その言葉に、虎杖の表情が変わる。
「…呪い」
「うん」
ロロは虎杖の手を握る。
「だから、少しずつ解いていこう。私がいるから」
虎杖はしばらく黙ったあと、照れたように笑った。
「…ありがとう」
虎杖はほっとしたように笑う。
「じゃあ、これからはごめんよりありがとうを増やす」
「できる?」
「できる。だって、ロロが隣にいるから」
夕暮れの帰り道。虎杖はいつものように前を向いて歩く。でも、その口から出る言葉は少しだけ変わっていた。
「ありがとう。」
その一言は、彼を縛っていた小さな呪いを、少しずつほどいていった。