第2章 虎杖悠仁
【水も滴るいい男】
任務を終えた帰り道。突然の夕立に、高専へ向かう二人はびしょ濡れになった。
「うわっ、すげぇ降ってきた!」
虎杖は笑いながら前髪をかき上げる。雨粒が桃色の髪を伝い、頬を流れ落ちる。その姿はまるで雑誌の一枚みたいに絵になっていた。
「…」
思わず見惚れていると、虎杖が首を傾げる。
「ん? どうした?」
「水も滴るいい男、だなって」
その一言で、虎杖はきょとんとしてから耳まで真っ赤になった。
「え!? な、何それ急に!」
「事実だけど」
「そういうことサラッと言うの反則だって!」
照れ隠しに頭をわしゃわしゃとかき混ぜる虎杖だったが、濡れた髪がさらに乱れてしまう。
「ほら」
ロロはそっと前髪を整えてあげる。指先が額に触れた瞬間、虎杖は息を呑んだ。
「…近い」
「はい、終わった」
手を離そうとすると、虎杖がその手首を軽く掴んだ。
「俺さ、水も滴るいい男って言われたの、めちゃくちゃ嬉しかった」
照れ笑いを浮かべた虎杖は、そのままロロの額へ軽くコツンと自分の額を当てる。
「でもさ」
「うん」
「俺から見たら、ロロの方がずっとかっこいいし、可愛い」
雨はまだ降り続いている。けれど二人は急いで帰ることも忘れ、顔を見合わせて笑った。
「風邪ひくぞ」
「じゃあ走る?」
「競争な!」
虎杖は楽しそうに手を引き、雨の中を駆け出した。その笑顔は、雨に濡れていても太陽みたいに眩しかった。