第2章 虎杖悠仁
【方向音痴】
「今どこ?」
休日。高専近くで待ち合わせをしていたロロと虎杖。
『えっと…自販機の前!』
「自販機いっぱいあるんだけど!?」
電話越しに虎杖が思わず笑う。
『赤いやつ!』
「赤いのもいっぱいある!」
ロロは昔から重度の方向音痴だった。地図アプリを見ても逆へ歩き、目印を見つけてもなぜか違う場所へ着いてしまう。
「動かないで!俺が迎えに行くから!」
『分かった!』
そう言って電話を切ったはずなのに。10分後。
「…いない」
虎杖は首を傾げる。再び電話をかける。
「え、動いた?」
『猫がいて追いかけちゃった』
「なんで!?」
思わず大声を出し、近くを歩いていた人が振り返る。
『ご、ごめん…』
「いや、怒ってないけどさ!」
虎杖は苦笑いしながら額を押さえた。
「今度こそ、その場で待ってて!」
『うん!絶対!』
5分後。
「…またいない」
電話をかけると。
『目の前にパン屋があって、いい匂いだったから…』
「また動いたの!?」
思わず笑ってしまう虎杖。
「もうしょうがないなぁ」
3度目の搜索。人混みを抜けた先で、小さく回りを見回しているロロをようやく見つけた。
「いた!」
「悠仁!」
ロロはホッとしたように駆け寄る。
「ごめん…また迷っちゃった」
しょんぼり肩を落とすロロに、虎杖は優しく笑った。
「気にしなくていいよ」
そう言って、ロロの手を握る。
「これなら、もう迷わないだろ?」
「…うん」
顔を赤くするロロを見て、虎杖も照れくさそうに笑う。
「待ち合わせは失敗したけどさ。こうして手を繋げたから、結果オーライってことで!」
その一言に、ロロは思わず吹き出した。それ以来、2人が出かける日はいつも、待ち合わせではなく最初から手を繋いで歩くのが、当たり前になった。