第2章 虎杖悠仁
【あと2年後】※中学生の虎杖
中学二年の春。ロロには、小さい頃から人には見えないものが見えていた。放課後の校舎、夕暮れの公園、人気のない路地。黒い影のような存在が、当たり前のようにそこにいる。誰に話しても信じてもらえず、いつしか見えないふりを覚えた。
そんなある日。隣町の中学校との合同スポーツ交流会が開かれた。
「おーい!ボールこっち!」
グラウンドを全力で駆け回る、元気いっぱいの男子。虎杖悠仁だった。周りを笑顔にする明るさで、初対面の相手にもすぐ声をかける。
休憩時間。ロロは校舎裏で1人、水を飲んでいた。その時、フェンスの向こうから黒い呪霊がゆっくり這い寄ってくる。目を合わせないように立ち去ろうとすると、突然、虎杖が走ってきた。
「あれ?1人?」
「…うん」
「せっかくだし、一緒にジュース飲まね?」
気さくに笑う虎杖。しかし、その背後では呪霊が腕を伸ばしていた。
「後ろ!」
思わず虎杖の腕を引く。
「え?」
呪霊の手は空を切り、フェンスにぶつかる。虎杖は周りを見回した。
「何かあった?」
「…何でもない」
「そっか?」
本当に何も見えていない様子だった。ロロは安心する反面、少しだけ複雑な気持ちになる。虎杖は何も知らずに笑った。
「でもありがとうな!転びそうだったのかと思った!」
「…そういうことにして」
「変な奴だなー!」
そう言って豪華に笑う虎杖につられ、ロロも少しだけ笑ってしまう。その笑顔を見た呪霊は、興味を失ったように姿を消した。
この日を境に、交流会で顔を合わせるたび、虎杖はロロを見つけては手を振るようになった。ロロはまだ知らない。この普通の中学生だと思っていた少年が、2年後、呪いの世界へ足を踏み入れることになることを。