第2章 虎杖悠仁
【油性ペン】
任務もなく、ロロと虎杖は寮のリビングでのんびりと過ごしていた。
「暇だなぁ」
そう言いながら虎杖はソファから立ち上がり、何の遠慮もなくロロの膝へゴロンと頭を乗せる。
「また膝枕?」
「だって一番落ち着く」
子どものように笑う虎杖の顔が愛おしくて、ロロは髪を撫で始めた。
「やっぱりロロの隣が一番…」
「はいはい」
その声はだんだん小さくなり、気づけば規則正しい寝息が聞こえてくる。
「寝るの早いなぁ」
無防備な寝顔を見つめていると、テーブルの上の油性ペンが目に入った。
「…少しだけ」
出来心だった。虎杖の頬に小さな肉球を1つ。思ったより上手く描けて、思わず笑みがこぼれる。
「もう1つだけ」
ペン先を近づけた瞬間。
「左右対称の方が可愛くない?」
「きゃっ!」
目を開けた虎杖に驚き、ペンを落としてしまう。
「起きてたの!?」
「肉球描かれたところから」
「最初じゃん!」
お腹を抱えて笑う虎杖に、ロロは頬を膨らませた。
「寝たふりなんてずるい」
「真剣な顔が可愛くて」
笑いながら、ロロの手を握る。
「お返ししていい?」
「顔はダメだからね」
「分かってる」
虎杖は油性ペンを拾い、ロロの手の甲へ小さいハートを描いた。
「はい、完成」
「手なの?」
「任務中も見えるだろ。これ見たら頑張れる」
照れもなく言われ、胸が熱くなる。虎杖はそのままロロの手を包み込むと、描いたハートへそっとキスを落とす。
「これ、お守り」
「…悠仁」
思わず名前を呼ぶと、虎杖は照れくさそうに笑いながらロロを抱き寄せた。
「任務で離れる時間があるからさ。こうして一緒にいる時間くらい、いっぱい甘えたい」
「私も」
ロロが背中へ腕を回すと、虎杖は嬉しそうに抱き締め返す。
「好き」
「私も好き」
見つめ合って笑った後、虎杖は優しく唇を重ねた。
「もう一回」
甘えるように言われ、ロロは小さく頷く。今度は少しだけ長く。幸せな空気に包まれた、直後。
「あ」
虎杖が固まる。
「どうしたの?」
「このペン、油性だった」
さっきまでの甘い空気はどこへやら。