第1章 五条悟
【B級映画】
任務帰り、五条は古びたレンタルショップで1本の映画を見つけた。
「タイトルからして名作気取りのB級映画って感じ」
派手なキャッチコピー。意味深な横顔。世界を変えるようなことが書いてあるくせに、ジャケットの端は色褪せている。
「これ、絶対ハズレだろ」
笑いながら借りてきたくせに、部屋で再生が始まると、五条は意外なほど真剣だった。ロロは隣でポップコーンを抱え、こっそり横顔を盗み見る。映画はというと、伏線らしきものを大量にばらまき、壮大な音楽だけは一流。なのに終盤になると全部投げっぱなしで、続きはあなたの心の中でみたいな終わり方をした。エンドロール。しばらく沈黙。
「…終わり?」
「終わりみたいだね」
「嘘でしょ。あれだけ意味深だったのに?」
五条はリモコンを握ったまま固まり、やがて肩を震わせて吹き出した。
「ははっ、なんだこれ!名作気取りなのに中身スカスカじゃん!」
ロロもつられて笑う。
「でも嫌いじゃないかも。不器用なくせに、一生懸命すごい作品になろうとしてる感じ」
その一言で、五条は少しだけ目を細めた。
「…優しいね、ロロ」
そう言ってソファにもたれ、ロロの肩へ頭を預ける。
「僕なら途中で切っちゃうタイプだけど」
「最後まで観たじゃない」
「ロロと一緒だから」
さらりと言われて心臓が跳ねる。五条はエンドロールをぼんやり見つめながら笑った。
「映画はB級だったけど、今日の時間はA級」
「自分で上手いこと言ったって顔してる」
得意げな笑顔に思わず笑ってしまう。外では雨が降り始めていたけれど、小さな部屋には映画よりもずっと温かな余韻だけが残っていた。