第1章 五条悟
【転生者】
3歳になった頃。ロロはようやく、自分の足で歩けるようになっていた。赤ちゃんの頃は何もできなかった。泣くことしかできなくて、未来を知っているのに誰も救えないことが悔しかった。でも今は違う。小さな手でも、できることはある。
「おーい」
聞き慣れた声に振り返る。そこには白髪の少年が立っていた。五条悟だ。まだ子供なのに、すでに周りとは違う空気を纏っている。
「また一人で難しい顔してる」
「してない」
「してるよ」
五条はしゃがみ込むと、ロロの頬を軽くつついた。
「3歳児が考える顔じゃないんだけど」
六眼って、本当に怖い。ロロが転生者だとまでは分からなくても、普通の子供じゃないことは気づかれている。
「さとるくん」
「なに?」
「ちゃんとねてる?」
その言葉に、五条の動きが止まった。
「…なんで?」
「かお」
「俺、顔いいけど?」
「そういういみじゃない」
思わずため息をつく。この頃から五条は、自分が特別な存在だと分かっていた。でも、特別だからこそ誰にも甘えられない。
「さとるくんもこどもなんだから」
そう言うと、五条は少しだけ目を丸くした。
「…俺にそんなこと言う人、初めて」
「さとるくんはさいきょうになるまえに、ふつうのこどもだよ」
しばらく沈黙が落ちた。そして。
「…変なの」
五条は笑った。いつもの生意気な笑顔。だけど少しだけ、嬉しそうだった。
「じゃあさ、俺が大人になっても、そう言ってよ。俺がどれだけ強くなっても」
五条は空を見上げる。
「俺を五条悟として見て」
胸が痛くなった。知っている未来。最強と呼ばれて、誰よりも遠い場所に立つ五条を。だからロロは、小さな拳を握る。
「やくそくする」
「…聞こえない」
「やくそくする!」
すると五条は満足そうに笑った。
「じゃあ、俺も約束する。ロロのこと、守る」
「こどもなのに?」
「俺、五条悟だよ?」
自信満々な言葉。でもロロは知っている。この小さな少年が、いつか世界を背負うことを。だからこそ、今だけは。ただの子供として笑っていてほしかった。原作を知っているロロが、この世界で最初に守りたいもの。それは未来じゃなくて。今ここにいる、大切な人達だった。