第1章 五条悟
【君は君】※片腕欠損夢主
任務先の廃ビルには、重い沈黙が残っていた。ロロは片腕を失った側を隠すように立ち、附いていた。
「…先生」
「なに?」
いつもの軽い声。でも、五条は気づいていた。今日の任務でロロが無理をしていたことに。
「私、高専を辞めようと思います」
その言葉に、五条の笑顔が消える。
「理由は?」
「もう戦えません。前みたいに動けない。皆の足を引っ張るだけです。片腕しかない私なんて、呪術師として意味ないですよ」
「それ、本気で言ってる?」
五条の声が低く響いた。
「君が失ったのは腕だけだよ」
ロロが顔を上げる。
「経験も努力も仲間を守りたいって気持ちも、全部なくなったわけじゃない」
「でも…怖いんです。また失敗したらって思うと、戦場に立つのが怖い」
初めてこぼれた本音。五条は少し黙ってから、静かに言った。
「怖いなら怖いって言えばいい。強い人間って、何も感じない人じゃない。怖くても、それでも前を見る人だよ」
ロロは唇を噛む。
「先生は私が辞めたいって言ったら、止めますか?」
「止める」
「どうして…」
「僕の生徒だから」
五条はいつものように笑う。
「ロロが自分で自分を諦めるの、先生として見過ごせないでしょ」
ロロは小さく息を吐いた。
「…もう少しだけ、頑張ってみます」
「うん、それでいい」
五条は優しく続ける。
「戻ってくる場所くらい、僕が守るよ」
失ったものは戻らない。それでも、ロロはもう一度だけ前を向いた。