第1章 五条悟
【アルバム】
放課後の高専。暇つぶしに古いアルバムを開いていると、背後からひょいと五条が覗き込んだ。
「なに見てるの?」
「卒業アルバム。勝手に見ないで」
「えー、僕も写ってるじゃん」
返事も待たずに五条は隣へ座り、肩が触れるほど近づいてページをめくる。
「あ、これ見て。入学式の僕、めちゃくちゃかっこいい」
「自分で言う?」
「事実だから」
写真の中でも腕を組み、得意げに笑う姿は今と何も変わらない。
「昔から生意気」
「最強だからね」
胸を張る五条に思わずため息が漏れる。次のページには訓練後の集合写真。泥だらけの皆の中で、五条だけが満面の笑みでピースをしている。
「先生が怒ってるじゃん」
「でも一番目立ってる」
「反省しなよ」
「目立つ才能だから無理」
あまりの開き直りに笑ってしまう。ページをめくると、文化祭で浴衣を着たロロの写真が現れた。五条はじっと見つめ、小さく笑う。
「これ、可愛い」
「…急に真面目」
「可愛いものは可愛い」
不意打ちの一言に頬が熱くなる。
「照れてる?」
「照れてない」
「耳まで赤いけど?」
にやりと笑う顔が悔しい。
「本当に生意気」
アルバムを閉じようとすると、五条が片手で押さえた。
「まだ終わりじゃない」
「返して」
「お願いして」
子どもみたいな意地悪さに呆れる。
「返してください、五条先輩」
「よくできました」
満足そうにアルバムを返し、五条はロロの顔を覗き込んだ。
「でもさ、このアルバムより面白いもの作れるよ」
「?」
「これからの思い出」
そう言ってスマホを取り出し、勝手に肩を抱き寄せる。
「はい、笑って」
「ちょっー」
シャッター音が響く。画面には驚くロロと、勝ち誇った笑顔の五条。
「1枚目、追加」
「勝手に決めないで」
「いいじゃん。ロロのアルバムで一番多く写るのは、僕なんだから」
その自信満々な笑顔は、昔の写真よりずっと眩しかった。