第1章 五条悟
【超能力】※学生五条
任務中、ロロは五条のすぐ後ろに立っていた。
「下がって」
珍しく真剣な声だった。目の前には特級呪霊。五条が圧倒しているように見えた、その瞬間。死角から放たれた一撃が、五条を狙う。
「悟!」
考えるより先に飛び出したロロは、その攻撃をまともに受けた。床へ叩きつけられ、呼吸が止まる。
「おい!」
五条が駆け寄ろうとした時、呪霊が追撃を放った。五条を傷つけさせたくない。その想いだけが胸を満たす。ドクン、と心臓が大きく鳴った。次の瞬間、空気が震えた。呪霊の動きが止まる。いや、止めたのはロロだった。周囲の瓦礫や鉄骨が音もなく浮かび、ロロを中心に円を描く。
「…覚醒したのか」
五条が目を見開く。ロロ自身も理解できない。ただ手をかざしただけで、呪霊の巨体は見えない力に押し潰され、地面へ沈んでいく。
「う、あ…!」
力はさらに膨れ上がった。建物が軋み、窓ガラスが一斉に砕ける。
「止まって…!」
願っても止まらない。涙がこぼれた。
「悟、怖い…!」
その声を聞いた五条は迷わずロロへ歩き出す。周囲を包む強大な力場が五条の進路を阻むが、それでも止まらない。
「そんな力で、俺を止められると思う?」
軽く笑いながら一歩ずつ近づき、ついにロロの手を握った。
「俺を見て」
青い瞳が真っすぐロロを映す。
「大丈夫。ロロは力に飲まれてるだけ。力そのものじゃない」
その言葉に張り詰めていた心がほどける。浮かんでいた瓦礫が次々と地面へ落ち、暴れていた超能力も静かに消えていった。力尽きたロロは五条の胸へ倒れ込む。
「ごめん…」
「謝るな」
五条はロロを抱きしめ、優しく頭を撫でた。
「こんな規格外の力を急に手に入れたら、誰だって怖い」
そして少しだけ笑う。
「安心しろ。これからは俺が隣で教える。最強の先生がつくんだから、ロロもその力を使いこなせるようになる」
その言葉に、ロロは小さく頷いた。もう、震えは止まっていた。