第1章 五条悟
【虹】※学生五条
「悟、虹」
雨上がりの校庭に、大きな虹が架かる。ロロが足を止めた瞬間、五条悟はため息をついた。
「はぁ」
「何その反応」
「負けた」
「誰に?」
「虹」
意味が分からず首を傾げると、五条は不機嫌そうに腕を組む。
「さっきからロロ、虹見てる時間の方が長い」
「だって綺麗だもん」
「俺も綺麗だけど?」
「自分で言う?」
「事実でしょ」
迷いのない返答に思わず笑ってしまう。その笑顔を見た五条は、さらに気に食わなそうに眉を寄せた。
「その笑顔、本当は俺が原因で見たかった」
「子ども」
「そうだよ」
あっさり認める。
「ロロのすごいは全部俺が独占したい」
「虹にまで張り合うの?」
「張り合う」
五条は一歩近づき、ロロの肩を抱いた。
「ほら、虹見えないでしょ」
口元だけを吊り上げる、いかにも性格の悪い笑み。
「虹なんて充分見ただろ」
「まだ30秒くらいしか見てない」
「30秒も?長すぎ」
「いやいや!」
「ロロの視線を30秒も取られるとか、虹って調子乗ってない?」
「虹に文句言わないで」
「言うよ」
五条はロロの顎をくいっと持ち上げる。
「ロロの瞳に映るのは俺だけでいい」
「そんな無茶苦茶な」
「無茶苦茶なのは今さらでしょ。ほら、虹より綺麗な青、見せてあげる」
サングラスを少しだけずらすと、吸い込まれそうな青い瞳がロロだけを映していた。その青は、一色だけで十分なくらい鮮やかだった。
「…ずるい」
ロロが小さく呟くと、五条は勝ち誇ったように笑う。
「勝負にならないでしょ?」
「最初からそのつもりだったの?」
「もちろん」
どこまでも傲慢で、どこまでも性格が悪い。それなのに、胸が高鳴ってしまう自分が少し悔しかった。