第1章 五条悟
【給料日前】
「やばい」
財布を開いたロロは、固まった。
「…千円しかない」
その様子を見ていた五条が、隣で吹き出す。
「アハハ!計画性ゼロじゃん」
「笑わないで!」
「だって面白いもん」
ケラケラ笑いながらも、五条はロロの頭をぽんと軽く叩いた。
「給料日まであと3日でしょ?」
「長いよ…」
「大丈夫、大丈夫」
妙に自信満々な笑みを浮かべる。
「今日はお金使わない遊びしよう」
「そんなのある?」
「あるある」
そう言うなり、五条は突然歩道でスキップを始めた。
「ほら!」
「えぇ!?」
「給料日前記念・節約スキップ大会!」
「何それ!」
「今、考えた」
満面の笑みで言い切る五条に、ロロは呆れながらも笑ってしまう。
「ほら、ロロも!」
「恥ずかしいって!」
「誰も見てない、見てない」
そう言って、五条は大げさなくらい軽やかにスキップを続ける。
「お金なくても、機嫌までなくす必要なくない?」
その言葉は、どこか五条らしかった。
「笑ってたら、3日くらいすぐ終わるって」
「そんな簡単かな」
「簡単じゃなくても、笑うほうが得じゃん」
ロロは小さく息をついて、恐る恐る一歩。ぴょん。ぎこちないスキップに、五条は腹を抱えて笑い出した。
「下手すぎ!」
「うるさい!」
「でも、かわいい」
さらっと言われて、思わず足が止まる。
「ほらほら、止まんない」
五条はロロの手を取ると、そのまま並んでスキップを始めた。
「給料日になったら、ご褒美に甘いもの食べに行こうか」
「奢ってくれるの?」
「んー、気分次第」
いたずらっぽく笑ったあと、ロロが頬を膨らませると、五条は肩を揺らして笑う。
「冗談だよ。ロロと笑えるなら、それが一番コスパいい」
2人の軽やかなスキップと笑い声が、どこまでも弾んでいた。