第1章 五条悟
【メイド服】
「五条先生、それ…」
部屋のドアを開けたロロは、その場で固まった。目の前には、黒と白のフリルが揺れるメイド服を着た五条がいた。長い脚にフリルのスカート、白いエプロン、頭にはレースのカチューシャ。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
裾をつまみ、完璧な笑顔でお辞儀をする。ロロは数秒黙ったあと、耐えきれず吹き出した。
「ふっ…あははは!」
「そんなに笑う?」
「だって、五条先生がメイドなんて反則です!」
「えー、似合ってると思うんだけど」
五条はその場で一回転する。
「ほら僕、スタイルいいから」
「そこは否定できませんけど」
笑いすぎて涙まで浮かべるロロを見て、五条は満足そうに口角を上げた。
「やっと笑った」
「え?」
「最近、任務続きで疲れた顔してたでしょ」
ロロは笑顔のまま目を瞬かせる。
「だから、何をしたら笑うかなって考えた結果がコレ」
「その発想になる人、五条先生しかいませんよ」
「褒め言葉?」
「半分だけです」
また笑うロロに、五条もつられて笑った。
「ロロが笑ってるなら成功だ」
ロロは笑いが落ち着くと、改めて五条を見上げる。
「でも、恥ずかしくなかったんですか?」
「もちろん恥ずかしかったよ。でも、ロロが笑ってくれるなら、そのくらい安い」
さらりと言われ、ロロは頬を赤くした。
「ずるいです…」
「何が?」
「そういうことを平気で言うところです」
五条は少しだけ照れたように笑う。
「平気じゃないよ」
そう言って頭のカチューシャを外し、ロロの頭にそっと乗せた。
「ほら、これでお揃い」
笑い合う2人の声が部屋いっぱいに響く。その日一番心に残ったのは、メイド服姿ではない。大切な人を笑顔にしたくて、全力でふざける五条の、不器用で優しい愛情だった。