第1章 五条悟
【オブラート】
「悟」
「ん?」
「今日から、何でもオブラートに包んで話して」
五条は首を傾げた。
「何で?」
「ストレートすぎるから」
「僕?」
「昨日だって『寝癖すごいね』じゃなくて『爆発した?』って言った」
「事実でしょ」
「事実でも言い方!」
五条は少し考え込み、指を鳴らした。
「オッケー。今日の僕は超やさしい」
嫌な予感しかしない。
「どう?」
ロロは新しい服を見せる。五条は腕を組み、真剣な顔になる。
「うーん…」
「似合わない?」
「いや」
五条は満面の笑みで答えた。
「個性が大爆発してる」
「オブラート!」
「あ。じゃあ、個性的で唯一無二」
「言い換えただけ!」
「進歩したでしょ?」
全然してない。昼食。ロロが作ったお弁当を一口食べた五条は固まった。
「…どう?」
「えっと」
珍しく言葉を選んでいる。
「これは」
「うん」
「素材の味を大切にしてる」
「薄味ってこと?」
「そうとも言う」
「オブラート下手!」
「難しいなぁ」
帰り道。ロロが小石につまずき、よろける。
「危なっ」
五条はすぐ腕を掴んで支えた。
「ありがと」
「地面と熱烈なハグをする前でよかった」
「またその言い方!」
「違う?」
「もっと『転ばなくてよかったね』とか!」
「なるほど」
五条は少し考え、咳払いをした。
「ロロが世界と急接近しなくて安心した」
「悪化してる!」
思わず笑ってしまう。そんなロロを見て、五条も吹き出した。
「やっぱ無理」
「でしょうね」
ふいに五条は歩みを止める。
「1つだけ、ちゃんとオブラートに包めないことがある」
「何?」
五条はロロの目をまっすぐ見て、少し照れくさそうに笑った。
「ロロが好き。これは包むと伝わらないからね」
頬が熱くなる。
「ずるい」
「知ってる」
五条は悪戯っぽく笑いながらロロの手を握る。
「だから、それ以外はいくらでも包む」
「本当?」
「うん」
「じゃあ、私が可愛いかどうかも?」
「それは、包む必要ないくらい可愛い」
結局、一番恥ずかしい言葉だけは、オブラートなんて使わない人だった。