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短編

第1章 五条悟


【謝罪】※学生五条


「…悟」

「何?」

「昨日は、ごめん」

廊下の窓にもたれていた五条は、サングラスの奥で笑った。

「へぇ。売った喧嘩、買い戻しに来たんだ」

「その言い方やめて」

「昨日は『顔も見たくない』って言ってたのに、今日はロロの方から来るんだ」

「…反省したの」

「遅い」

その一言に胸が痛む。

「本当にごめん」

「ふーん」

五条はロロの前まで歩いてくると、わざと顔を覗き込んだ。

「泣きそう」

「泣かない」

「強がり」

「違う」

「じゃあ帰れば?」

その言葉に息が止まる。

「どうせ俺なんかいなくても、平気なんでしょ?」

意地悪だ。昨日のロロの言葉を、そのまま返してくる。

「違う」

「昨日はそう言ってた」

「…勢いだった」

「便利な言葉だね、『勢い』って」

何も言い返せない。五条は肩をすくめる。

「じゃ、解散」

くるりと背を向けたその瞬間、ロロは反射的に五条の制服の袖を掴んだ。

「…帰らないで」

ぴたり、と五条の足が止まる。数秒の沈黙のあと、肩が小さく震えた。

「やっと言った」

振り返った五条は、勝ち誇ったように笑っていた。

「最初からその一言が聞きたかった」

「…誘導したの?」

「もちろん」

「性格悪い」

「知ってる」

「最低」

「でも、ロロはちゃんと本音を言えた」

五条はロロの掴んだ手を見下ろして、指を絡めるように握る。

「意地張って『ごめん』だけで終わらせようとしてたでしょ?」

図星だった。謝れば終わると思っていた。本当は、離れてほしくなかったと言えばよかったのに。

「俺は謝罪より本音が欲しい」

その声だけは、驚くほど優しい。

「喧嘩なんて何回してもいい」

五条は照れ隠しみたいに笑う。

「でも、売った喧嘩はちゃんと買い戻しに来い」

「…うん」

「その代わり俺は絶対、ロロを帰さない」

そう言って私の額を軽く小突く。

「逃げ道なんか最初から用意してないから」

その笑顔は相変わらず意地が悪い。なのに握る手だけは、どこまでも優しかった。
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