第14章 伏黒甚爾
【100年後】
「100年後の月を、見届けたい」
ロロが縁側でそう呟くと、隣に寝転んでいた甚爾が面倒そうに片目を開けた。
「急に何だ」
「月が綺麗だから」
夜空には、雲ひとつない丸い月。優しい光が、ロロ達の足元まで静かに照らしていた。
「100年後も、こんな月が誰かを照らしてるのかなって思って」
甚爾は月を見上げ、小さく鼻で笑う。
「その頃には俺もロロもいねぇ」
「うん」
分かっている。だからこそ少し寂しかった。
「一緒に見られたらいいのに」
その一言に、甚爾はしばらく黙る。やがてロロの隣へ座り直し、ごつごつした手でそっとロロの手を包んだ。
「100年後は無理だ」
「…うん」
「でも、明日の月なら見られるかもしれねぇ」
ロロは思わず甚爾を見つめる。未来の約束なんてしない人が、自分から明日と言った。それだけで胸が熱くなる。
「じゃあ、明日も一緒に見よう」
「都合が合えばな」
ぶっきらぼうな返事に思わず笑う。
「甚爾さんらしい」
「期待するな」
ロロは繋いだ手を少しだけ握り返した。
「今日の月も、明日の月も、一緒に見られたら幸せ」
甚爾は少し照れたように視線を逸らす。
「…欲張りな奴」
「そうかな」
「ああ。でも」
甚爾は夜空を見上げたまま、小さく笑った。
「悪くねぇ」
その短い言葉だけで十分だった。100年後の月は見届けられない。それでも、今この夜を一緒に過ごせることが、何より愛おしい。月明かりに照らされた2人の影は、寄り添うように静かに重なっていた。