第1章 五条悟
【パシリ】※学生五条
前よりも五条のパシリ扱いが目立つようになった。
「ねぇ、ジュース」
「はい」
「今度は肉まん」
「はい」
「あと、この書類を職員室に」
「…はい」
ある日、ついにロロの堪忍袋の緒が切れた。
「五条先輩、自分で行ってください!」
五条はサングラスの奥で目を細めると、わざと大げさに肩を落とした。
「えぇー? 俺、傷ついた」
「傷ついてませんよね!」
「バレた?」
軽い調子に、ロロは深いため息をつく。
「五条先輩、私を便利屋だと思ってます?」
「思ってるよ」
あまりにも即答だった。
「…最低」
「でもさ」
五条は笑みを消し、少しだけ真面目な顔になる。
「ロロ以外には頼んでないでしょ」
「それは…」
事実だった。他の後輩に頼めば断られることもあるのに、五条はいつもロロにしか頼まない。
「なんでですか」
「ちゃんと嫌だって言えるから」
「…?」
「本当に嫌なら断る。それでも引き受けるのは、ロロが納得してる時だけだ。だから安心して頼める」
意外な理由に言葉を失う。
「それに、毎回ちゃんとお礼はしてる」
そう言って紙袋を差し出す。中にはロロが前に、食べてみたいと呟いていた限定スイーツが入っていた。
「…覚えてたんですか?」
「俺、記憶力いいから」
得意げに笑う五条に、怒る気力が抜けていく。
「でも、パシリって言うのは禁止です」
「えー」
「禁止です」
「はいはい。じゃあ今日からは…」
五条は少し考え、いたずらっぽく笑った。
「専属お買い物アドバイザー」
「変わってません!」
ロロが抗議すると、五条は声を上げて笑う。
「その怒った顔も好きなんだよね」
「もう絶対頼まれませんから!」
そう言って歩き出したロロの後ろから、五条が笑い混じりに呼ぶ。
「じゃあ今度は、俺がロロの荷物持ちするよ。それで許して?」
振り返ると、本当に悪びれない笑顔。その笑顔がずるくて、結局ロロは、一回だけですよと小さく笑ってしまった。