第1章 五条悟
【幸運の女神】
「ねぇ、気づいてる?」
任務帰り、五条が不思議そうにロロを見た。
「何がですか?」
「ロロといると、やたら運がいい」
ロロは首をかしげる。
「偶然じゃないですか?」
「偶然にしては出来すぎ」
五条は指を折って数え始めた。
「コンビニのくじは一等。自販機は当たり付き。福引は特賞。しかも任務では、呪霊が偶然まとまってくれるから片づけやすい」
「最後は私のおかげじゃないですよ」
「いや、絶対ロロのおかげ」
ロロは苦笑するしかなかった。その日の帰り道。五条が、飲み物でも買おうかと自販機で適当にボタンを押す。
『おめでとうございます!もう一本!』
「ほら」
「たまたまです」
さらに歩いていると、商店街で福引大会をやっていた。
「一回だけ引いてみなよ」
「期待しないでくださいよ」
ロロがガラガラと回す。コロン、と金色の玉が転がった。
「特賞です!」
鐘が鳴り響き、周囲が拍手する。ロロは固まり、五条は吹き出した。
「やっぱり」
「えぇ…」
帰り道、五条は笑いながら言う。
「今日で確信した」
「何をです?」
「ロロは幸運の女神」
「そんな大げさな」
「僕は最強だけど、運だけはロロに勝てない」
「じゃあ先生は、私がいないと運が悪いんですか?」
「試してみる?」
翌日。ロロが別任務で不在だった。五条は階段を踏み外しかけ、買ったコーヒーはぬるく、楽しみにしていた限定スイーツは目の前で売り切れ。
「今日は珍しくツイてませんね」
伏黒に言われ、五条は真顔で答えた。
「女神がいないからだよ」
翌日、ロロと合流した途端、補助監督から連絡が入る。昨日延期になった任務が、呪霊の自然消滅でなくなったそうだ。
「…ほら」
五条は得意げに笑う。
「やっぱりロロは僕の幸運の女神」
「先生、それ絶対言いたいだけですよね」
「うん、言いたいだけ」
そう言って、五条はロロの頭を優しく撫でる。
「だから、これからも僕の隣にいて」
照れたロロが小さく頷くと、五条は満足そうに微笑んだ。
「最強の僕にも、一人だけ勝てない相手がいる。それが、僕だけの幸運の女神なんだ」