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短編

第12章 脹相


【アップルパイ】


「…これは何だ」

脹相が真剣な顔で見つめているもの。それは、焼きたてのアップルパイだった。

「アップルパイ」

「それは分かる」

「じゃあ、何?」

「なぜ俺に?」

あまりにも真面目に聞くものだから、ロロは思わず笑ってしまう。

「脹相に食べてほしかったから」

「俺に?」

「うん」

脹相は少し困ったように眉を寄せた。

「俺は、こういうものをもらうことに慣れていない」

「じゃあ、これから慣れて。私が作ったもの、脹相に食べてもらいたい」

しばらく黙った後、脹相は小さく頷いた。

「分かった」

一口食べる。その表情はいつも通り真剣で、味を分析しているようだった。

「どう?」

「…」

「美味しくない?」

「違う、美味しい」

その一言が、思った以上に嬉しかった。

「よかった」

「ただ」

「ただ?」

「ロロが作ったということの方が、嬉しい」

不意打ちすぎて、言葉が止まる。

「脹相、そういうこと急に言うよね」

「思ったことを言っただけだ」

「それがずるいんだよ」

脹相は首を傾げる。本当に分かっていない顔。そんなところも、脹相らしい。

「次も作ってくれるか」

「アップルパイ?」

「ああ。また、ロロと食べたい」

その言葉に笑顔になる。甘いりんごと、優しい香り。でも何より甘かったのは、不器用な脹相がくれた、小さな約束だった。
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