第11章 真人
【魂】
「君の魂は、愛される形をしているね」
真人はロロの胸元へ指先を伸ばしかけ、あと数センチのところで止めた。普段の真人なら迷わない。触れた瞬間、魂を弄び、笑いながら形を変えてしまう。それなのに。
「…変だな」
真人は小さく笑う。
「俺、君だけは壊したくない」
その言葉に、ロロは息を詰めた。
「何を言ってるの?」
「分からないんだ」
真人は心底楽しそうに笑うのに、その笑顔はどこか歪だった。
「君の魂を見た瞬間、気付いたんだ」
ゆっくりとロロの周りを歩く。
「誰かに抱きしめられて、誰かを信じて、誰かを許して。そうやって何度も愛されてきた魂」
「違う」
「違わないよ。魂は嘘をつかない。君は傷ついても、人を嫌いになれなかった。裏切られても、誰かを信じることをやめなかった。だから、こんな形になった」
ロロは何も言えない。真人だけが見える世界。魂の形。そこでは、隠し事なんて何1つできない。
「…嫌いだよ」
真人はぽつりと零した。
「こんな魂」
ロロは目を見開く。
「だってさ」
真人は泣きそうな笑顔を浮かべる。
「こんな魂を見ちゃったら、壊したら終わりじゃないか」
いつもなら壊すことでしか知れないものを、初めて壊したくないと思ってしまった。それが、たまらなく気に入らない。
「ねえ」
真人はロロの手をそっと包む。触れれば魂は見える。それでも術式は使わなかった。ただ温度だけを確かめるように握る。
「俺は呪霊だ。君と一緒にはいられない」
それは初めて口にした、本音だった。
「だからお願い」
真人は優しく笑う。
「誰にも殺されないで。君の魂は、愛される形をしている。せめて最後まで、そのままでいて」
そう言って手を離した真人は、一度も振り返らず闇の中へ消えていった。