第10章 夏油傑
【策略】※学生夏油
「今日、なんか変じゃない?」
ロロがそう言うと、夏油は何食わぬ顔でお茶を飲んだ。
「そうかい?」
「朝から妙に優しい」
「いつも優しいだろう?」
「自分で言う?」
夏油はくすりと笑った。けれどロロは気づいていた。朝から妙に予定を聞かれる。好きなものまで尋ねられる。そして、何かを隠しているような視線。
「…何か企んでるでしょ」
「さあね」
「絶対そう」
「ロロは勘がいいな」
そう言いながらも、夏油は否定しない。夕方。ロロが部屋に戻ると、机の上に一通の手紙が置かれていた。『庭へ』。
「…怪しい」
それでも向かう。庭に出た瞬間。小さな灯りが一斉にともった。
「わ…」
いつもとは違う、柔らかな雰囲気。その中央に夏油が立っている。
「誕生日でもないのに?」
「誕生日じゃないと祝ってはいけないのかい?」
「そういうわけじゃ…」
「なら問題ないね」
夏油は小さな包みを差し出した。
「最近、頑張っていただろう?」
ロロが包みを開ける。そこには、以前何気なく可愛いと言っていたものが入っていた。
「…覚えてたの?」
「もちろん」
「いつ買ったの?」
「秘密」
「ずっと計画してたの?」
「それも秘密」
ロロが笑う。
「ほんと、策略家だね」
「ロロ相手ならね」
「どうして?」
夏油は少しだけ目を細めた。
「ロロが喜ぶ顔を見たいから」
あまりにも自然に言われて、ロロは言葉を失う。
「…そういうの、反則」
「そうかい?」
「うん」
「では、もう一つ策略を教えようか」
「なに?」
「ロロが今日ここへ来ることも、最初から分かっていた。それだけじゃない」
「まだあるの?」
「ロロなら最後には笑ってくれると思っていた」
ロロは思わず笑ってしまう。
「…本当にずるい人」
「知っているよ」
夏油は満足そうに笑った。
「でも、ロロに喜んでもらえるなら、いくらでもずるくなるさ」