第10章 夏油傑
【マーブル模様】
カフェの窓際。ロロは運ばれてきたカフェラテをスプーンでゆっくりとかき混ぜる。黒いコーヒーに白いミルクが溶け合い、くるくるとマーブル模様を描いていた。
「綺麗」
思わず呟くと、向かいに座る夏油が微笑む。
「混ざる瞬間は、一度しか見られないからね。同じ模様は二度とできない」
ロロはスプーンを止め、揺れる模様を見つめた。
「なんだか、人と人の出会いみたい」
「そう思う理由を聞いても?」
「最初は全然違う色なのに、少しずつ混ざって、気づいたら1つになってる。私と傑も、そんな感じだったなって」
夏油は静かにカップを手に取る。
「確かに。ロロは甘いミルクみたいで、私は少し苦いコーヒーだった。どちらかだけじゃ物足りない。2つが混ざって初めて、ちょうどいい味になる」
ロロは照れくさそうに笑う。
「じゃあ、私たちはカフェラテ?」
「いや」
夏油は首を横に振った。
「もっと複雑だ。嬉しい日も、喧嘩した日も、泣いた日もある。全部混ざり合って、今の私たちになっている」
そう言いながら、夏油はロロのカップへ砂糖を1つ落とした。
「甘すぎるよ」
「今日はロロが少し疲れている顔をしていたから。疲れた日には、少し甘さを足せばいい」
その一言だけで、張りつめていた心がふっと軽くなる。
「…気づいてたんだ」
「ロロのことだからね」
夏油は穏やかに笑う。
「笑顔の奥にある気持ちくらい、見逃さないよ」
ロロは小さく笑い、スプーンでもう一度カップを回した。新しいマーブル模様がゆっくりと広がる。
「傑、これから先も、何度でも混ざり合おうね」
夏油はそっとあなたの手に触れ、優しく指を絡めた。
「ああ。ロロが隣にいるなら、どんな味の毎日でも悪くない」
カップの中のマーブル模様は少しずつ1つの色へ変わっていく。その様子を見つめながら、夏油は静かに呟く。
「違うままで出会って、少しずつ寄り添って、1つになっていく。私はその過程こそが、愛なんだと思う」
ロロは微笑み、夏油のカップと自分のカップを軽く合わせた。小さく響いた音は、二人だけの優しい約束のようだった。