• テキストサイズ

短編

第8章 七海建人


【ナナミン】


仕事を終えた七海は、静かに玄関の扉を開けた。

「ただいま」

その声を聞いた瞬間、ロロがぱたぱたと駆け寄ってくる。

「おかえり、ナナミン!」

その愛称を聞くたび、七海は少しだけ困ったように目を細める。

「またその呼び方ですか」

「だって、ナナミンはナナミンだもん」

ロロが笑いながら彼のネクタイを緩めると、七海は小さく息をついた。

「他の人の前では控えてください」

「じゃあ2人きりなら?」

「…好きに呼んでください」

その一言が嬉しくて、ロロは思わず抱きつく。

「ナナミン、大好き!」

勢いに押されながらも、七海はロロをしっかり抱き留めた。

「ロロは本当に無防備ですね」

「ナナミンだから安心してるの」

その言葉に、七海の表情がわずかに緩む。

「…そういうことを、簡単に言わないでください」

「どうして?」

「理性が試されます」

珍しく照れたように視線を逸らす七海が可笑しくて、ロロはもう一度呼ぶ。

「ナナミン」

「…はい」

「ナナミン」

「はい」

「ナナミン」

三度目には、七海は観念したように笑った。

「今日は何度でも呼んでください。ロロにそう呼ばれるのは、私だけの特権ということにしておきます」

そう言うと、七海はロロの額へ優しく口づけを落とす。

「ただし、そのあとはこちらの時間です」

穏やかな笑みを浮かべる七海の手は、もう離れる気がないほど優しく、そして確かにロロを包み込んでいた。
/ 189ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp