第8章 七海建人
【アイス】
夕暮れの任務帰り。
「暑かったですね」
七海がコンビニで買ったアイスを、ロロに1本手渡した。
「ありがとうございます!」
包装を開けて食べ始めた途端、勢いよくかじりすぎて頭を押さえる。
「いたた…!」
「…頭が痛くなりましたか」
七海は少し呆れたように笑い、ロロの額にそっと手を当てた。
「冷たい物はゆっくり食べるものです」
「子供扱いしないでください」
「では、大人らしく食べてください」
真面目な口調なのに、どこか優しい。ロロは頬を膨らませながらも、少しずつアイスを口に運んだ。その様子を七海は穏やかな目で見つめている。
「…そんなに見ないでください」
「見ていますよ」
「なんでですか?」
「可愛いからです」
あまりにも自然に言われて、思わずアイスを落としそうになる。
「な、七海さん!?」
「事実を述べただけですが」
耳まで真っ赤になるロロを見て、七海は珍しく口元を緩めた。そのとき、ロロのアイスが少し溶けて指についた。
「あっ」
拭こうとする前に、七海が手首をそっと掴む。
「貸してください」
ハンカチで丁寧に指先を拭き終えると、そのまま手を離さない。
「七海さん?」
「…もう少し、このままで」
照れ隠しのように前を向いたまま、小さく呟く。
「任務中は、ロロを守ることしか考えられません。こうして安心して手をつなげる時間は、私にとって貴重なんです」
胸がいっぱいになり、ロロはぎゅっと握り返した。
「私もです」
七海は少し驚いた顔をしたあと、ふっと優しく笑う。
「今日は帰るのが惜しいですね」
「じゃあ、もう少し歩きませんか?」
「ええ。アイスが溶けきるまで…いえ、ロロが帰りたくなるまで付き合います」
そう言って、恋人つなぎをする。普段は冷静で大人な七海が、誰にも見えないところでだけ見せる独占欲に、ロロの胸は甘く高鳴り続けた。