第1章 五条悟
【コレクション】
「五条先生、その棚の箱って何ですか?」
放課後の職員室。ロロが何気なく尋ねると、五条は動きを止めた。
「…見つかったか」
その反応が気になり、ロロは箱を開ける。
「え?」
中には透明な袋に一つずつ入れられた小物が、日付付きで整然と並んでいた。
『4月12日、ロロが落としたヘアゴム』。
『5月27日、飲み終えたジュースのキャップ』。
『6月18日、授業中に折ったシャープペンの芯ケース』。
『7月2日、いらないと言って捨てたメモ』。
ロロは1枚、また1枚と取り出していく。
「…五条先生。これ全部、私のですか?」
「そう」
「なんで?」
「思い出」
「いやいや、思い出ってレベルじゃないですよ!」
さらに奥を見ると、小さな封筒まである。
『ロロの前髪を切った日の切れ毛(1本)』。
ロロの動きが止まる。
「…五条先生」
「何?」
「ちょっと引きました」
「え」
「今までで一番引きました」
五条は少し考える。
「1本だけだよ?」
「本数の問題じゃないです!」
ロロは箱を閉じ、深いため息をついた。
「ヘアゴムまでは百歩譲って分かります」
「うん」
「でも、切れ毛はアウトです」
「アウトか」
「完全にアウトです」
五条は困ったように笑いながら頭をかく。
「じゃあ、それだけ捨てる」
「そこだけ?」
「他は思い出だから」
ロロは呆れて肩を落とした。
「…五条先生って、最強だけど時々すごく残念です」
「褒めてる?」
「全然」
そう言いながらも、ロロは笑ってしまう。
「次からは、普通に写真にしてください」
「写真ならセーフ?」
「それが普通です」
「勉強になった」
「本当に分かってます?」
「たぶん」
職員室には、ロロのため息と五条の笑い声が響いていた。