第6章 乙骨憂太
【好き】
「ねぇ、知ってる?」
高専の廊下で、五条が楽しそうに笑った。
「憂太がロロのこと、どれだけ好きか」
「え?」
突然の話に、ロロは目を丸くする。
「五条先生」
後ろから乙骨の慌てた声が聞こえた。
「何を話してるんですか」
「いやぁ、秘密を教えてあげようと思って」
五条は悪戯っぽく笑う。
「この前の水族館デートさ、憂太、クラゲ見てた時間よりロロを見てた時間の方が長かったんじゃない?」
「五条先生!」
真っ赤になる乙骨。普段、落ち着いていて優しい乙骨がこんなに慌てる姿を見るのは珍しかった。
「だって本当のことでしょ?」
五条は続ける。
「手もずっと繋いでたんでしょ?」
乙骨は気まずそうに目を逸らす。
「離したくなかったので」
小さな声。でも、ロロにはちゃんと聞こえた。
「いつもなら我慢するんだけど、ロロの隣にいる時間は、誰にも譲りたくなかった」
「憂太…」
「ごめん。重かったかな」
「ううん」
そう答えると、乙骨はほっとしたように笑った。五条はそんな2人を見て、呆れたように肩をすくめる。
「いやぁ、まさかあの憂太がここまで変わるとはね。昔は自分の気持ちより相手のことばっかりだったから。でも今はちゃんと好きって顔してる」
乙骨は照れながら、ロロの手を握る。
「だって、大切な人だから」
五条は大げさにため息をついた。
「はいはい、ごちそうさま」
からかわれて困る乙骨。それでも繋いだ手だけは、最後まで離さなかった。