第6章 乙骨憂太
【口説き文句】
「憂太ってさ、口説き文句とか言えなさそう」
ロロがくすっと笑うと、乙骨は少しだけ傷ついたように眉を下げた。
「そんなことない…と思う」
「ほんと?」
「たぶん」
「じゃあ、証明して」
「えっ」
逃げ場を失った乙骨は、観念したように小さく息を吐く。
「笑わないでね」
「笑わないよ」
しばらく考え込んだ後、乙骨はロロの前に立った。
「僕は、世界を救いたいわけじゃない。ロロを笑顔にしたいだけ」
乙骨は恥ずかしそうに続ける。
「任務が終わるたび、一番に思い浮かぶのはロロなんだ。今日は会えるかな、とか。ちゃんとご飯食べてるかな、とか。ちゃんと眠れてるかな、とか。そんなことばっかり考えてる」
ロロの胸がじんわり熱くなる。
「だから、僕の好きは、言葉だけじゃない。ロロを心配することも。ロロを守りたいと思うことも。全部、好きなんだ」
ロロは照れ隠しに乙骨の胸を軽く叩く。
「…ずるい」
「え?」
「そんな真っすぐ言われたら、何も返せない」
乙骨は困ったように笑った。
「じゃあ、最後に1つだけ」
乙骨はロロの手を取り、そっと指を絡める。
「ロロがもし、これから先の人生で迷うことがあったら、僕を選んで。幸せにする、なんて大きなことは言えないけど、でも」
優しい瞳がまっすぐロロを映す。
「幸せになるための隣には、ずっと僕がいる」
その一言に、ロロは顔を真っ赤にして俯いた。
「…憂太」
「うん」
「それ、口説き文句として100点」
乙骨は照れたように笑う。
「よかった」
ロロは乙骨の手をぎゅっと握り返した。
「そんなこと言われたら、もう逃げられないじゃん」
「逃がさないよ」
珍しくいたずらっぽく笑う乙骨に、ロロも笑ってしまう。その穏やかな笑顔を見ながら思う。乙骨の言葉は派手じゃない。でも、どんな甘い口説き文句よりも、心を奪われる。