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短編

第6章 乙骨憂太


【幸せな時間】


部屋には静かな雨音だけが響いていた。ソファで隣同士に座り、他愛ない話をしているうちに、いつの間にか会話は途切れる。乙骨が、穏やかな瞳でこちらを見つめていた。

「…どうしたの?」

「いや」

少し照れたように笑って、乙骨はロロの前髪をそっと耳にかける。

「今日も、ロロがすごく可愛いなって思って」

「いきなりそんなこと言わないで…」

顔が熱くなる。視線を逸らそうとすると、乙骨は優しく顎に触れ、目を合わせた。

「逃げないで」

その声は甘いのに、どこか真剣だった。

「…うん」

小さく頷くと、ゆっくりと距離を縮める。唇が重なる。触れるだけの優しいキス。離れるかと思ったその瞬間、乙骨はもう一度そっと唇を重ねた。急かすこともなく、確かめ合うような穏やかな口づけ。

「…憂太」

名前を呼ぶと、乙骨は額を寄せて微笑む。

「ごめん。今日は、もう少しだけこうしていたくて」

その照れくさそうな笑顔が愛しくて、ロロは自分から少しだけ距離を縮めた。

「私も」

その一言に、乙骨は目を丸くしたあと、嬉しそうに笑う。

「本当に?」

返事の代わりに、ロロは乙骨の手を握る。すると乙骨は、その手を大切そうに包み込み、もう一度ゆっくりとキスをした。窓の外では雨が降り続いている。時間がゆっくり流れる中、2人は何度も優しく唇を重ねた。

「こんなに幸せでいいのかな」

ぽつりと零した乙骨の言葉に、ロロは首を傾げる。

「幸せなのはロロも同じだよ」

乙骨は少しだけ目を潤ませながら笑った。

「ロロがそう言ってくれるだけで十分だよ」

乙骨はそっとロロを抱き寄せる。

「これからも、たくさん笑って、たくさん思い出を作ろう」

「うん」

「ロロが嫌じゃなければこれからも、こうして手を繋いで、時々キスをしたい」

「嫌なわけない」

そう答えると、乙骨は安心したように笑い、最後にもう一度、短く優しいキスを落とした。

「大好きだよ」

真っ直ぐな言葉に、ロロは照れながら微笑む。

「私も、大好き」

雨音だけが静かに響く部屋で、二人は寄り添ったまま、穏やかで幸せな時間を過ごした。
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