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短編

第6章 乙骨憂太


【帰らないで】


任務のない休日。ロロの部屋で映画を見終えると、時計の針はもう夜を指していた。

「そろそろ帰るね」

乙骨が立ち上がると、ロロは彼の袖をちょん、とつまむ。

「…もう少しだけ」

その一言に、乙骨は目を瞬かせた。

「帰らないで」

少し拗ねたように言うロロが可愛くて、乙骨は思わず笑ってしまう。

「そんな顔されたら、帰れなくなっちゃう」

ロロが両手を広げると、乙骨は照れながらもそっと抱きしめてくれた。

「甘えん坊だね」

「今日は憂太に甘えたい気分なの」

その言葉だけで、乙骨の胸はいっぱいになる。

「…いくらでも」

抱きしめる腕に少しだけ力がこもる。

「今日は僕が、ロロをたくさん甘やかす」

ロロは乙骨の胸に頬を預けた。規則正しい鼓動が聞こえる。

「安心する」

「僕も」

乙骨はロロの髪をゆっくり撫でながら、小さく笑う。

「こうしてると、時間が止まればいいのにって思う」

ロロが顔を上げると、目が合った。どちらからともなく笑ってしまう。

「憂太」

「うん?」

「好き」

あまりにも自然にこぼれた言葉に、乙骨は一瞬固まった。

「…もう一回言って」

「好き」

今度ははっきりと。乙骨は照れたように笑いながら、ロロの額へそっとキスを落とす。

「僕も、大好き」

「足りない」

ロロがいたずらっぽく言うと、乙骨は困ったように笑う。

「欲張りだね」

「憂太限定」

その一言で、彼は観念したように肩をすくめた。

「仕方ないな」

頬にひとつ。鼻先にひとつ。最後に唇へ、触れるだけの優しいキス。

「これで足りた?」

ロロは首を横に振る。

「まだ」

「えぇ?」

困ったように笑う乙骨だったが、その笑顔はとても幸せそうだった。

「じゃあ、今日はロロが満足するまで、一緒にいよう」

そう言ってもう一度、ロロを抱き寄せる。

「ロロが笑ってくれるなら、それが僕にとって一番のご褒美だから」

ロロは乙骨の胸元に顔をうずめ、小さく、幸せと呟く。その言葉を聞いた乙骨は、愛おしそうにロロの髪へ口づけを落とした。
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