第6章 乙骨憂太
【ガーネット】※夢主一般人
「私、憂太が好き」
震える声で伝えた想いに、乙骨は何も言えず立ち尽くしていた。長い沈黙の末、乙骨は小さく笑う。
「…ずるいな」
「え?」
「その言葉、ずっと聞きたかった」
ロロは目を見開く。乙骨はポケットから、使い込まれたガーネットのチャームを取り出した。ロロが1年前、お守りだからと贈ったものだった。
「任務のたびに持ってた。怖い時も、苦しい時も、これを見るとロロを思い出せた」
そっとチャームを握る乙骨の指先は震えている。
「僕も好きだよ」
夢みたいな言葉だった。涙があふれ、思わず笑う。
「じゃあ…!」
一歩踏み出そうとしたロロを、乙骨は苦しそうに止めた。
「でも、付き合えない」
世界が止まった。
「どうして…?」
「ロロは普通の幸せを生きられる人だから。僕の隣は、呪いも死も隣り合わせなんだ。今日笑っていても、明日には帰れないかもしれない」
その瞳には、自分ではなくロロを心配する色しかなかった。
「ロロが僕の帰りを待ち続ける未来なんて、選ばせたくない」
「私は平気」
「僕が平気じゃない」
その一言が胸に刺さる。
「好きだからこそ、守りたい。ロロには、誰かと笑って、普通に年を重ねてほしい」
優しすぎる拒絶だった。ロロは泣きながら笑う。
「…最低」
「うん」
「そんな言い方されたら、諦めるしかないじゃん」
乙骨も笑った。でも、その笑顔は今にも泣き出しそうだった。ロロはガーネットを空へかざす。夕日に照らされた深紅の宝石が、きらきらと輝く。
「ガーネットって、真実、変わらない愛って意味があるんだって。だから、この恋はなくならない」
ロロはチャームをぎゅっと握りしめる。
「今日で初恋は終わり」
乙骨は震える手で、ロロの頭をそっと撫でた。
「ありがとう。ロロに恋をしてもらえて、本当に幸せだった」
その手が離れた瞬間、ロロは涙をこらえながら背を向ける。
「さよなら、憂太」
「…さよなら」
振り返らなかった。振り返れば、きっと2人とも前へ進めなくなるから。ポケットの中で揺れるガーネットだけが、終わったはずの初恋を、最後まで静かに輝かせていた。