第6章 乙骨憂太
【砂時計】
乙骨の部屋には、小さな砂時計が置かれている。それは、ロロから初めてもらったプレゼントだった。
「憂太に似てると思ったの」
そう言われた時、乙骨は少し困ったように笑った。
「僕に?」
「うん。優しいところ」
ロロは砂時計を指差す。
「砂って、急がないで少しずつ落ちるでしょ?憂太もそう。ゆっくりでいいんだよ」
その言葉が、乙骨には何より嬉しかった。任務から帰った乙骨は、部屋に入ると真っ先に砂時計を見る。
「…ただいま」
誰もいない部屋で呟いた瞬間。
「おかえり」
後ろから声がした。振り向くと、ロロが笑って立っていた。
「びっくりした?」
乙骨は目を丸くしたあと、安心したように笑う。
「うん。でも、嬉しい」
ロロは砂時計を手に取る。
「まだ大事にしてくれてるんだね」
「当たり前だよ」
少し照れながら続ける。
「これを見ると、ロロが待っていてくれる気がするから」
その言葉に、ロロの頬が赤くなる。
「…そんなこと言うなんて、ずるい」
乙骨は慌てる。
「え、僕変なこと言った?」
「ううん」
ロロは笑って、乙骨の手を握る。
「嬉しかっただけ」
乙骨は握られた手を見つめ、そっと握り返す。強く。でも、壊さないように。
「昔は、幸せになっていいのか分からなかった。でも、ロロといる時間は、大事にしていいんだって思える」
砂時計の砂が、最後の一粒まで落ちる。ロロはそれをひっくり返した。
「じゃあ、また最初から。これからもいっぱい時間を作ろうね」
乙骨は優しく笑う。
「うん」
小さな砂時計がまた静かに時を刻み始める。その砂が落ちる時間よりも長く。二人の幸せな時間は、ゆっくり続いていく。