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短編

第5章 伏黒恵


【何十年先の未来】


「恵」

ソファに並んで座りながら、ロロがぽつりと尋ねた。

「もし私がおばあさんになって、しわしわになっても好きでいてくれる?」

伏黒は読んでいた本から顔を上げる。

「急にどうした」

「ちょっと気になっただけ」

ロロは照れ笑いを浮かべた。

「髪も白くなって、今みたいに走れなくなって、きっと見た目も変わるでしょ?」

伏黒は少しだけ考え込む。そして静かに本を閉じた。

「変わるのは当たり前だ」

「…うん」

「俺だって、じいさんになる」

「想像できない」

「俺も」

伏黒は珍しく口元を緩めた。

「でも、一つだけ分かる」

「何?」

「朝起きたらロロがいて、一緒に飯を食ってどうでもいい話をして」

「うん」

「たまに喧嘩して」

伏黒はロロの手をそっと包み込んだ。

「それで夜になったら、おやすみって言う」

ロロの目が潤む。

「毎日?」

「ああ」

「おばあさんになっても?」

「何歳になってもだ」

少し照れたように視線を逸らしながら続ける。

「俺は、ロロと歳を重ねたい」

ロロは嬉しさのあまり、伏黒の肩にもたれた。

「約束だよ」

「約束だ。だから、ちゃんと健康でいろ」

「恵もね」

「分かってる」

2人は顔を見合わせ、自然と笑った。何十年先の未来なんて誰にも分からない。それでも2人は信じていた。明日も、その次の日も笑い合えることを。その積み重ねが、いつか白髪の似合うおじいさんとおばあさんになった2人の、一番の幸せな思い出になるのだから。
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