第5章 伏黒恵
【昔の約束】
任務帰り。ロロと伏黒は高専へ戻る坂道を並んで歩いていた。
「今日は珍しく無傷だったな」
「恵が助けてくれたから」
「俺は当たり前のことしただけだ」
その言葉を聞いて、ロロはふと思い出す。
「ねぇ、恵。昔、公園で約束したこと覚えてる?」
「…覚えてる」
伏黒は歩みを止めた。小学生の頃。泣いていたロロを助けてくれたのは、無愛想な男の子だった。
『怖いなら俺を呼べ』
そう言って差し出された小指。ロロも小指を絡めた。
『約束ね!』
『…あぁ』
たったそれだけの約束だった。
「私ね、あの日からずっと恵のこと考えてた」
「俺も忘れたことない」
「え?」
「ロロが『絶対迎えに来てね』って何回も念を押してきたからな」
「そんなこと言ったっけ?」
「言った」
懐かしそうに目を細める伏黒を見て、ロロは笑った。
「ちゃんと守ってくれてるね」
「約束したからな」
その一言が嬉しくて、胸が温かくなる。
「でもさ、子供の約束なんて普通忘れるよ?」
「忘れない」
「え?」
「ロロとの約束だから」
思わず息を飲む。伏黒は照れくさそうに頭を掻きながら続けた。
「…ずっと守るつもりだった」
ロロは自然と笑みをこぼした。
「じゃあ、約束をもう1つ増やそうよ」
小指を差し出す。
「これからも隣にいて」
伏黒は少し驚いた後、小さく笑ってその小指に自分の指を絡めた。
「約束する」
指切りを終えると、伏黒はそのままロロの手を包むように握る。
「離さない」
子どもの頃に交わした約束は、少し大人になった2人の新しい約束へと、静かに変わっていった。